一本道ではなく、いくつもの道をつくる
前回は、施設が情報提供をためらう背景には、防犯や管理体制、組織のルールなど、さまざまな事情があるというお話をしました。
その背景を知ることで見えてきたのは、「相手を変えよう」とするよりも、「情報を届ける方法を増やそう」という発想です。
今回は、私たちが実際に取り組んできた工夫をご紹介します。
もちろん、「この方法なら必ずうまくいく」という魔法のような答えはありません。しかし、一つの方法だけに頼らず、複数のルートを組み合わせることで、少しずつ前へ進めることはできます。

工夫1 オープンデータを土台にする
多目的トイレの調査では、ゼロから施設を探し始めるのではなく、自治体が公開しているオープンデータを積極的に活用しています。
仙台市での調査では、過去に作成された紙のバリアフリーマップと、自治体が公開している施設データを組み合わせ、約100か所の調査リストを作成しました。
こうすることで、「新しい情報を教えてください」という依頼ではなく、「公開されている情報を現地で確認させてください」というお願いになります。
すでに公開されている情報を活用することで、施設側にとっても安心して対応しやすくなり、調査への理解を得られる場面が増えてきました。
工夫2 調査の窓口を工夫する
すべての連絡を私たちだけで行うのではなく、アポイント取得を外部の協力者にお願いすることもあります。
これは単に効率を上げるためだけではありません。
整理された形で問い合わせが届くことで、施設の担当者も状況を理解しやすくなり、話を聞いていただける可能性が広がります。
活動は一人で抱え込むものではなく、得意な人に力を借りることで前に進める。そんなことも、この活動を通して学びました。
工夫3 行政と一緒に仕組みを考える
施設へ個別にお願いするだけではなく、施設を管理する行政とも継続的に対話を重ねています。
庁舎を管理する部署とは、調査の進め方や対象範囲について、一歩ずつ合意を積み重ねています。
また、デジタル化を担当する部署とは、私たちが集めた情報を、行政の認証制度や既存の仕組みとどう結び付けられるかについても相談を続けています。
行政との連携は時間がかかります。
しかし、一つひとつの積み重ねが制度そのものをより良い方向へ動かし、結果として多くの施設で情報公開が進みやすくなる可能性があります。
一歩ずつでも、前へ進む
もちろん、こうした工夫を重ねても、すべてが順調に進むわけではありません。
今でも調査をお断りされることはあります。
それでも、一つの方法が難しければ別の方法を試す。一人で難しければ仲間と取り組む。現場だけで難しければ制度にも働きかける。
そうやって選択肢を増やしてきたことで、以前よりも着実に情報を届けられる場面が増えてきました。
私たちは、「断られない活動」を目指しているのではありません。
必要な情報を必要な人へ届けるために、あきらめずに方法を考え続ける活動を続けています。
一本道が通れなくても、別の道を探せばいい。
その積み重ねが、誰かの「出かけてみよう」という一歩につながると信じています。