バリアフリー情報とインターネットの20年(後編)

なぜ今、「みんなのトイレマップ」が必要なのか

前回の記事では、バリアフリー情報とインターネットの20年を振り返りました。

2000年代のBBS(掲示板)、2010年代のSNS。そして2020年代の現在。

この20年で情報を発信する手段は大きく進化しました。しかし、障害当事者の立場から見ると、ひとつの疑問が残ります。

「本当に必要な情報は、手に入るようになったのだろうか。」

今回はそのことについて考えてみたいと思います。

「多目的トイレあり」だけでは分からない

私は、NPO法人みんなのトイレマッププロジェクトの活動を通して、多目的トイレの調査を行っています。

調査を始めて気付かされるのは、「多目的トイレあり」という情報だけでは、実は何も分からないということです。

例えば車いすユーザーであれば、

  • ドアは自動か手動か
  • 十分な広さがあるか
  • 手すりの位置はどうなっているか

が気になります。

ストーマをお持ちの方であれば、

  • オストメイト設備はあるか
  • 汚物流しは設置されているか

が重要になります。

介助者と一緒に利用する方であれば、

  • 二人で入れる広さがあるか
  • ベビーベッドや介護ベッドがあるか

が大切になります。

つまり、同じ「多目的トイレ」でも、人によって必要な情報は全く違うのです。

行ってみなければ分からない

バリアフリー情報が不足していることで起きる問題があります。

それは、

「行ってみなければ分からない」

ということです。

健常者の方にとっては、「少し不便だった」で済むことかもしれません。

しかし、障害当事者にとっては違います。

目的地に着いたのにトイレが使えない。

段差があって入れない。

介助者と一緒に利用できない。

そうしたことが起きると、その外出そのものが失敗になってしまうことがあります。

だからこそ私たちは、出かける前に情報を必要としているのです。

写真には大きな価値がある

私たちが調査で特に重視しているのが写真です。

文章だけでは伝わらないことがたくさんあります。

ドアの形状。

設備の配置。

トイレ全体の広さ。

手すりやボタンの位置。

これらは写真を見るだけで、多くのことが分かります。

以前、車いすユーザーの方から、

「写真があるだけで、行けるかどうか判断できる」

という声をいただいたことがあります。

まさにそこが重要なのです。

私たちは施設を評価したいのではありません。

利用する人が、自分に合うかどうかを判断できる情報を提供したいのです。

点のバリアフリーから線のバリアフリーへ

もう一つ、私たちが大切にしている考え方があります。

それは、

「点のバリアフリーから線のバリアフリーへ」

という考え方です。

目的地だけがバリアフリーでも、そこへたどり着けなければ意味がありません。

駅のエレベーターはどこにあるのか。

改札からホームまではどう移動するのか。

多目的トイレはどこにあるのか。

私たちは現在、「仙台版みんなのトイレマップ」と並行して、駅のバリアフリー動線を調べる「ドコのる」の取り組みも進めています。

安心して外出できる社会を実現するためには、施設単体ではなく、移動全体を支える情報が必要だからです。

情報は誰かの一歩になる

NPO法人みんなのトイレマッププロジェクトのスローガンは、

「バリアフリー情報を誰かの一歩に」

です。

私たちは単にデータを集めたいわけではありません。

その情報によって、

「行ってみよう」

「出かけてみよう」

「旅行してみよう」

と思える人が一人でも増えてほしいと願っています。

20年前より情報は増えました。

しかし、まだまだ必要な情報は足りていません。

だからこそ私たちは、障害当事者の視点で調査し、誰もが使いやすい形で情報を発信し続けていきたいと思います。

その一歩一歩が、より自由に外出できる社会につながると信じています。

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